回転機械の振動 1.introduction

このカテゴリーの内容について

経緯

題名の通り、これからしばらく回転機械の振動についての記事を掲載していくつもりです。

これまでこのサイトでは主に深層学習を取り扱ってきたので、
結構毛色の異なる内容になると思います。

理由としてはこれまで記事を書いてきた深層学習の学習(個人の勉強という意味で)が
思うように進んでいないことが一番の要因です。

正直趣味として勉強している深層学習の終着点をどこに置くべきなのか決めかねており、
進むべき方向が漠然としているため記事にできるような内容も結果も得られていない状況です。

もう一つ別の理由として、私が業務上の理由です。

私は業務で振動問題を扱うことがたまにあるのですが、現在の私が所属する会社ではこのあたりの
理論的な新人教育が十分ではないと感じています。

これにはここ数年で会社の体制が変わったことなども影響しているのですが、
ともかく私が新人の頃に受けたような教育を今の新人に十分に受けさせられる環境にないため、
新人への教育は私たち先輩が直接行っていかなければいけません。

そんな中私自身の知識を省みたときに、専攻が振動問題ではなく、
そもそも不真面目な学生であった私の曖昧な知識では後輩を指導するのに十分ではなく、
再度勉強が必要だと思ったからです。

内容と最終的に目指すところについて

内容としては振動の基礎についてと、私が業務上で扱う場面の多い回転機械の振動について
書くつもりです。

レベルとしては高校卒業レベル+αくらいの数学・力学知識を想定しています。
(近年の高校カリキュラムを把握していませんが、微分・積分・微分方程式・複素数・
 ベクトル等、もしかしたら線形代数に関する知識が必要となる場合があるかもしれません。)

最終的には私の業務上での個人的な要求を満たすため、
回転機械の振動を数値解析できるようなプログラムを作れればと考えています。

 

機械振動学(機械力学)とは

振動を扱う学問のことを機械系の分野では機械力学や機械振動学などと呼ぶ場合が多いです。

機械力学で扱うもっとも一般的で簡単なモデルが下図のようなものです。

見慣れない方には分かりづらいかもしれませんが、左側に固定されて動かない壁があり、
その壁と質量mの物体(緑色)がばね定数kのばねでつながっています。
緑色の物体は左右(x方向)に移動できるというモデルになります。

一応高校物理でもこのようなモデルの運動は学習するはずなので、
このようなモデルはsin関数で表される単振動運動をすることを知っている方もいるかと思います。

x=Asin{\omega} t  \space \space (\omega = \sqrt{k/m})

では機械力学では何を学ぶのかというと、このようなモデルが持つ特性を知ることになります。

機械力学が扱うもの

このようなモデルの特性を知って何が嬉しいのか、機械設計をしたことがない方にはピンと来ないかもしれません。

私も大学に入るまでは「ばね」といえば一般的に想像されるようなコイルばねのことを想像していました。

しかし、大学で材料力学を学ぶと、多くの(個体)材料にはばねと同じ性質があることを知ります。
(むしろコイルばねはその性質をよく活かすための形状として考えられたものです。)

つまり、機械を構成するほとんどの材料はばねとしての性質を持ち、当然質量をもっています。

実際の機械はばねは質量を持ち、質量はばね性を持っているので
上図のように単純なモデルはほぼあり得ませんが、このような単純化されたモデルの性質を
知ることで、機械の持つ振動的な性質を知ることができるのです。

次回以降の内容

次回以降、おそらく長々と振動問題の方程式について書いていくことになると思います。

ですが実際にこれらの知識がなければ機械設計ができないかというと、
そんなことはないと思っています。

簡単に言ってしまえば、

・機械には共振点と呼ばれる振動周波数があり、このような周波数の振動に晒されると
 異常振動や破壊につながります。

・共振周波数は\sqrt{k/m}で表されるので、質量が大きいほど共振周波数が低くなり、
 ばね定数が大きい(ばねが硬い)ほど共振周波数は高くなります。

・減衰(今回のモデルでは扱いませんでしたが)が大きいと共振周波数での振れは小さくなります。

これぐらいを把握しておけばそれなりの設計はできてしまうのかなと思っています。
(最近では解析ソフトも多く出回り、共振周波数は3Dモデル等から計算してくれます。)

一方で、問題が発生したときに原因を追究し、対策を考えるのに必要なのは、
こう言った振動現象の裏側にどのような理論・理屈があるのかということを知ることではないかと
思っています。

そのような部分を私自身整理していくために、次回以降の記事を書いていこうと思います。

また、私は業務上で回転機械の振動を扱うことが多いですが、
回転機械には特有の振動特性があるにも関わらず、私は大学でそのような現象を学んだ記憶が
ありません。
(原因となる部分を学んだ今でもそう思ってるので多分本当に教わっていないと思います。)

多分回転機械の振動という分野自体が研究としてややマイナーな分野になってしまったため、
私の大学では積極的にカリキュラムに取り入れていないのではないかと思います。

そのような分野についての取っ掛かりを知りたいという方の助けにもなればなと考えています。

理論の部分については手元にあった「機械力学(森北出版 末岡淳男・綾部隆 共著)」を参考に
書いていきたいと思います。

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