回転機械の振動 2-1.振動の基本-不減衰自由振動

回転機械の振動についての最初の具体的な説明として、まずは基本となる不減衰モデルでの振動について
説明をしていきます。

不減衰振動とは

不減衰振動とは、文字の通り減衰のない(考えない)振動系における振動のことです。

最も単純なモデルは前回も提示した上図の様なものです。

図のモデルでは質量mの物体が左側の動かない壁にばね定数kのばねでつながれており、
物体は左右方向(x方向)に移動することができます。位置xは右向きがプラスとなっています。
(上下方向、画面手前-奥方向の移動は考えません。)

このようなモデルに対して他に何の力も作用しない運動は高校物理でも習い、その運動は

x=Asin\omega t  \space \space (\omega = \sqrt{k/m})

となります。一応これは簡単な表記で、正確な表記ではありません。

今回ちゃんと運動方程式を立てて導出される運動は

x=Asin(\omega t - \phi^{*})  \space \space (\omega = \sqrt{k/m}) \\
または\\

x = Acos(\omega t - \phi) \space \space ( \omega = \sqrt({k/m})
\\ 
 \\
ただし\phiは位相角で \space \phi^{*}=\phi-\pi/2

私は高校物理でsin関数で単振動を表すように習った記憶がありますが、
大学等で使用する教科書ではcos関数を使用して表記する場合が多いようです。

どちらも表す意味は同じですが、今回参考にしている書籍の表現もcos関数ですので、
基本的にはcos表現を使用していきます。

\phi、\phi^{*}は初期条件等から導かれる位相角で、単純な物理的には
プラスでもマイナスでも、sin関数についてでもcos関数についてでも
得られた数字を使用すれば良いのですが、専門的な名前がついているので
一応書籍で表記されているcos表記のマイナスがついた定数を位相角\phiとします。

 

不減衰自由振動

上で説明した運動は、物体に対してばねの復元力以外の力が働かないため、
不減衰自由振動と呼ばれます。

早速、こちらの運動について運動方程式を立てていきましょう。

運動方程式については高校物理で学んでいると思うので説明はしません。

基本となる運動方程式

mx''=F

の各変数に該当する値を代入していきます。(以下xの微分をx’と表記します。)

mはm、xはxをそのまま使用し、力Fはフックの法則

F=-kx

を使用します。運動方程式は

mx''=-kx

となります。さらに移項して

mx'' +kx = 0

こちらは良くある線形同次微分方程式ですので、xについて解いていきましょう。

線形同次微分方程式の解法については番外編1で説明していますので、
もしそちらを読んでおらず解法が分からないという方は参考にしてみてください。

回転機械の振動 番外編1. 微分方程式の解法

解法通り、まずは特性方程式を得ます。x = e^{\lambda t}を代入し、

m\lambda^2 +k = 0

これを解くと

\lambda = \pm i\sqrt{k/m}

ここでiは虚数単位です。普通k,mは正の数なので-k/mが負の数となり、平方根は虚数となります。
(2乗して負となる実数は存在しないため、虚数が解となる。)

これを解法の一般解に代入すると

x=C_{1}e^{i\sqrt{k/m}t}+C_{2}e^{-i\sqrt{k/m}t} \space \space \space (C_1,C_2は定数)

となりますが、これではどんな運動なのかさっぱりわかりません。

なのでさらにここでオイラーの公式(eの虚数乗に関する公式)

e^{\pm i\theta}=cos\theta \pm isin\theta

を用いて以下の様に書き換えます。

\begin{align*}
x &= C_{1}(cos(\sqrt{k/m}t)+isin(\sqrt{k/m}t))+C_{2}(cos(\sqrt{k/m}t)-isin(\sqrt{k/m}t))\\
x &= (C_{1}+C_{2})cos(\sqrt{k/m}t)+(C_{1}-C_{2})isin(\sqrt{k/m}t)\\
x &=A^{*}cos(\sqrt{k/m}t)+B^{*}sin(\sqrt{k/m}t)\\
x &=Acos(\sqrt{k/m}t-\phi) ~~~ (ただしA=\sqrt{A^{*2}+B^{*2}},\phi=tan^{-1}(B^{*}/A^{*}))


\end{align*}

上式でA^{*}=(C_{1}+C_{2})、B^{*}=(C_{1}+C_{2})A、\phiを各係数間で変換していますが、
元の係数C_{1}、C_{2}は初期条件等により決まる定数で、変換後も係数の数などに変化がないので、
各表現方法で初期条件等を満たすように決めれば問題ありません。
(最初の表現方式だと初期条件はC_{1}=〇〇、C_{2}=××だから、A^{*}=◇◇で…というような計算は不要ということです。)

  

実際の運動

上記の通り運動の式が得られたので、式がどのような動きを表しているか見てみましょう。

A=1、\phi = 0としてxをグラフ化すると、下図のようになります。
\lambdaの大きさは1往復にかかる時間が変わるだけなので、適当に決めています。

基本的にcosだけの式なので、見ての通り正弦波(cosなので余弦波?)をなぞるように
往復運動をします。

ちなみにこのような運動は初期(t=0)の状態としてx=1、x’=0としたときのものです。
つまり、物体を距離1の位置まで引っ張り、静かに手を離したときの運動ということになります。

この結果だと、一度動き出した物体は振動し続けるということになりますが、
これは現実の運動とは少し異なると思います。

この違いの原因となるのが、次に説明する減衰です。

現実的にはこの世界に存在するほとんどのものには減衰が存在し、
振動は徐々に収まって(減衰して)いきます。

次回は減衰自由振動について説明したいと思います。

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